マクロな視野からのアプローチ
本書は太平洋戦争の戦史を追ったものではない。一次史料(主に英語圏の国のもの。確かに日本のは少なすぎる)を駆使し、この戦争の特質・問題点等を浮き彫りにするものである。そこには、著者自身の先入観や偏狭なイデオロギーは殆ど見られない。畢竟、米英の正義を主張するものでもなく、勿論日本の正義を主張するものでもない。正統実証主義研究の成果と言えるだろう。 特に興味深いのは、第七章である。この章では連合国間に響く不協和音が記されているが、評者は連合国は一致団結していたと思っていただけに驚きの連続であった。唯、日本とドイツの関係ほどアメリカとイギリス、オーストラリアの関係は深刻でなかったようだ。このような指摘は日本人の著作には見られることはあまりないので、非常に刺激的かつ新鮮であった。 兎に角、太平洋戦争をマクロ的な視野からアプローチしてみたい方にはお薦めである。 なお、本書では「極東戦争」という言葉が使われており(著者自身がこう呼ぶのが適切であると述べている)、我々日本人はこの呼称に違和感を覚えるが、この戦争の主な戦場を挙げてみると、成程この呼称は「大東亜戦争」や「太平洋戦争」よりも相応しいと思われる。然し、今後は秦郁彦氏が述べているように「アジア太平洋戦争」という呼称が一般的になっていくであろうと思われる。
イデオロギーを徹底的に排除
非常に退屈な本である。なぜなら事実(とその出典)のみを延々と書き連ねた内容だからだ。しかしイデオロギー(右も左も)に冒されがちな太平洋戦争に係わる歴史書にうんざりし、著者の感想や解釈から離れた史実のみを知りたいと思っている向きにはピッタリの本だと思う。 著者クリストファー・ソーンは第2次世界大戦について多くの著書を残しているイギリスの歴史家である。この本では、白人の目から見た太平洋戦争の意味だけでなく、アジア人の視点による意味についても、当時の政治家・活動家・知識人等による膨大な発言・著書・手紙や行動から読み取ろうとしている。 ただ、日本に関する記録が少ないように思えたのが残念である。
草思社
米英にとっての太平洋戦争〈下巻〉 太平洋戦争における人種問題 容赦なき戦争―太平洋戦争における人種差別 (平凡社ライブラリー) GHQ作成の情報操作書「真相箱」の呪縛を解く―戦後日本人の歴史観はこうして歪められた 小学館文庫 軍事力と現代外交―歴史と理論で学ぶ平和の条件
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