情けない日本軍上層部の実態。
失敗を知るということは非常に重要なことながら、日本軍の太平洋戦争に関する各事例を知れば知るほど、当時の幼年学校、士官学校、陸大出身の将官、佐官には失敗以上に本当に空しさを感じる。本書と共に、ノモンハン事件(昭和14年5月?9月)から沖縄戦までの「失敗の本質ー日本軍の組織論的研究」と併せて読むと面白い。どうしてこうも「強気一辺倒」なのか、会議ではどうして威勢のいい案だけが通るのか、常に勘違いをしている陸軍幹部達である。ガダルカナル作戦、北海道旭川の第28連隊の兵士2500名、山村出身の純朴な若い兵士が多かったはずだ。それを統率する一木支隊長(大佐)は古いタイプの典型軍人、肉弾攻撃、白兵突撃の効果を実体験からも信じ切っている。大本営は現場を全く知らないし、隊長がこういう軍人であれば現場はたまったものではない。インパール作戦、ビルマ方面軍の河辺中将、第十五軍の牟田口中将。特に第十五軍の兵士には、インパール作戦の最大の敵は「牟田口」、二番目はビルマの雨季と天候、三番目が飢餓とマラリア、こう言わしめた。陸軍ワースト1の牟田口中将のことである。中央の大本営作戦部はと言えば、田中新一、服部卓四郎、辻政信、嗚呼この面々だ・・・。
現代にも通じる諸問題を平易に論じている
真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、国民統制、ガダルカナル戦、山本五十六、アッツ島戦、絶対国防圏、インパール戦、政府の戦争指導体制、日本の政治体制。これら10個のテーマをあげ、日本が太平洋戦争でなぜ敗れたかを論じている。
それぞれ別な時期の別な相手に別なテーマで語られた講演ををまとめたものなので、論じ方の深さが違うなどの一貫性がないのは致し方ない。
太平洋戦争の歴史の風化が進んでいる。しかし、この戦争には現代に通じる日本の諸問題が隠れている。この種の本を軍人が書くと個々の戦闘の細かい点ばかり書いているが、本書は政治体制などもっと大きな観点から論じている。
誰も「やめよう」と言えない体質、実際には存在しない「絶対国防圏」を宣伝したり、誰も責任をとらない政治体制などは、現代にも通じる。
本書のような観点でもっと太平洋戦争を語る機会を増やすべきだと思う。
太平洋戦争や日本の昭和史を学びたい人に★★★★☆
歴史的な考察と責任
太平洋戦争の失敗に対する洞察は多いですが、その中で傑出した著作だと思います。太平洋戦争の開戦からそれぞれの段階で、事象を分析しつつ、どういった点が日本に欠け、敗戦へとつながっていったか、といったアプローチで構造的に考察しようとする視点が特徴的です。先の大戦における、日本の失敗は、@長期的な展望・戦略といったものの欠如。国家戦略としての開戦そのものへの疑問A軍部の体質論。客観的な分析・反省がないままの(海軍の)隠匿の体質C陸軍の指導者の人間的な資質の問題。主体的・主観的にしかものを見れなかったことD結局、精神論が先行、ものを言えない雰囲気をつくってしまったことE社会的な多様性を欠いたこと。指導者が軍隊の規範しか知らないため、政治・経済・社会・文化などはそれ自体が独立して存在できず、すべて軍事の為に従属する、そういう国家になってしまったF政治の弱さ。何時の間にか政治がどこかへいってしまい、軍事だけが前面にでてきてしまう。軍事だけが美学となり、自己陶酔に陥ってしまう。外交が機能しない 軍部の精神論を振りかざす主観性、すなわち客観性・合理性・冷静さといったことを欠いた点を本質とみなす論は多いですが、興味深いのは、結局、そうしたことが当時の日本の社会にあった民主主義の相対的な未熟さに起因することが示唆されている点です。歴史的に当時の日本社会というものを位置づけ、評価してみようとする視点は私には新鮮でした。また、教育の問題も大きかったのでしょう。しかし、そうした示唆を踏まえた上でも、普遍的なヒューマニズムを意識し、やはり戦争指導者としての責任をあくまで求めていくその姿勢には、共感を強くおぼえます。
おもしろいが、後半息切れ.....
太平洋戦争に負けたことを前提にしているので、書かれていることには一つひとつ納得できるのだが、何故、そうならざるを得なかったのか、もう少し詳しく書いて欲しい。それでも前半は、グイグイと読み進められるが、後半は薄い内容(前半までがよかったがために)で、ちょっと残念。でも、おすすめです。
PHP研究所
太平洋戦争 日本の敗因〈1〉日米開戦 勝算なし (角川文庫) 東條英機と天皇の時代 (ちくま文庫) ドキュメント太平洋戦争への道―「昭和史の転回点」はどこにあったか (PHP文庫) 東京裁判の教訓 (朝日新書) 本は10冊同時に読め!―本を読まない人はサルである!生き方に差がつく「超並列」読書術 (知的生きかた文庫)
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